前回の記事で、GoogleMobilePlayBookの最初にある「モバイルになぜ取り組まなければいけないのか、まず何をするべきなのか」というセクションについて、ざっと眺めてきました。
今回は、「モバイル戦略を進めていくには、どの様に組織を動かしていけばいいのか?」と「モバイルに適応したマーケティングを行うにはどうしたらいいか?」の章です。
足回りの部分と、具体的にマーケティングにどう落とし込んでいくかという大切な部分です。
目次
1.どの様に組織を動かしていけばいいのか?
これについてはGoogleは「モバイルに詳しい人間を集めたプロジェクトチームを作って、権限を与えろ」
ということを薦めています。
ASSIGN A MOBILE CHAMPION IN YOUR COMPANY AND EMPOWER THEM WITH A CROSS- FUNCTIONAL TASK FORCE.
今までPC向けやリアル向けのマーケティング活動しかしていないのなら、モバイルユーザという全く新しいユーザ層に対してアプローチしていくのは、新規事業並みのボリュームがあるはずです。
ということは、マーケティングチーム以外の様々なチームと共闘しなければいけないところが多々ある、ということです。
2.現状のマーケティングをどうやってモバイルに適応させていけばいいか?
これについては前回と内容が被りますがGoogleは「モバイルを通じてユーザが欲しがっているものを提供する」ということを薦めています。
WHAT IS THE EXPERIENCE LIKE FOR A CONSUMER TRYING TO FIND YOU AND CONNECT WITH YOU?
(消費者があなたを見つけて、そしてあなたと関係性を持ちたいと思った時、彼らはどんな体験をしたいと思っているんだろう?)
例えばキーワード広告にしても、PCなら「Buy Now!」でいいかもしれませんがモバイルなら、その前に「最寄りの店舗はこちら」かもしれません。
モバイルで来るアクセス者のニーズが一体何なのか、それは潜在的なものかもしれませんが、ここを握ることと、それに合わせたメッセージングや導線設計、デザインをしていくことが、最初にやるべきことです。
また、手法としては「ClickToCall」が非常に効果的だとGoogleは述べています。
2.1.リッチメディアを見てもらいやすいのは「モバイル」
モバイルからのアクセス、具体的にはスマートフォンとタブレットからのアクセス者は
「広告をクリックしたうちモバイルユーザは1%しか占めないのに、滞在時間のうち23%を占めている」
というアンバランスな状態であり、これはGoogleによると「動画などのリッチメディアを見ているから」です。
文字や画像ではなく、動画を中心とした動きのあるリッチメディアを見ることに対しての敷居が低いということは、それだけたくさんのメッセージを伝えることができるということ。
従来のPC中心の見せ方とは違った見せ方が可能になります。なぜそうなったのかは、モバイル端末は自分だけで見られるからなのか、イヤホンをつけながら見るのが簡単だからなのか、スキマ時間を活用できるからなのか、そこは分かりません。
しかし、動画を見せようと思ったら今はモバイル端末が最適、ということは言えそうです。
PCとは別に、リッチメディアを中心としたマーケティングをやってみるのが、最初は効果があるようです。
ただもちろん今までのマーケティングの考え方を忘れていいわけではありません。
- いったい誰にメッセージを伝えたいのか?
- どのようにしたら、その人達に効率良く接触できるのか?
- 彼らがサイトに来たら、どんなアクションを彼らには取ってもらいたいのか?
- どうやってどのようにそれを測定するのか?
- 広く伝えたいのか、それとも口コミレベルで留めておきたいのか?
デバイスとアクセスユーザの志向が違う、という点を押さえた上で、基本的には従来のWEBマーケティングの考え方を踏襲していけばいいのではないかと思います。
2.2.既存のマーケティングチャンネルにおけるモバイルユーザの振る舞い
既存のマーケティングチャネルにおいて、モバイルユーザは
- メールマーケティングについては、開封率が30%も高い。ただし、モバイルユーザを考慮したレイアウトにすること(特にHTMLメールを送っている場合は)
- ソーシャルとの親和性は高い。SNSを使っている人の半分が毎日モバイルコンテンツに触れている。また、スマートフォンなどで写真をとってそれを アップロードし、それを見る人がたくさんいる。これらのことを踏まえて、何かやれることがないか考えるのが効果的
- クーポンは効果的
- オフラインの広告媒体からは「○○で検索」やQRコードを使ってモバイルに誘導するという方向で
終わりに
全3回に渡ってGoogleのMobilePlayBookを追いかけてきました。
不完全な部分も多いので、早く日本語訳が出ればいいなと思います。
総合的に見て思うのはモバイルは、リアルとネットを橋渡しする存在だということ。
今までにない、リアルとネットの境目を綺麗に取り外してくれる媒体であり、同時にリアルでもネットでもない独自の存在であるモバイル。
端末の発展とマーケティングの変化、ユーザのリテラシの変化、普及率の変化、さまざまなものが日々変化していく中で、取り組み方も戦術レベルではどんどんと変わっていくことが予想されます。
だからこそ、Googleが言う
「モバイルを通じて何を求めているか考え、提供する」
という根本のところをきちんとおさえたうえで、それにのっとって「戦略」という太い幹を立て、その太い幹の上に乗ってその時その時の手法でそれを実現していくということが、必要です。
ある程度固まった媒体なら、本質を多少損ねても、定型的な手段を真似していれば大きな失敗はありません。
しかしモバイルの世界は、非常に「柔らかい」状態なので、本質をおさえておかないとすぐにブレてしまいます。
このGoogleのPlayBookもどんどん改定されるのではないかと思います。
最初の記事でご紹介したGoogleが最も伝えたかったメッセージ
- バリュープロポジション(他者が出せない、あなただけが提供できる価値)は、あなたの狙っている買い手が、何をあなたのビジネスから「モバイルを通じて」得たいと思っているか、から逆算して考える。競合他社を分析した上で。
- モバイルサイトが必要。作った後は、書い手の使い方などをもとに最適化を繰り返すことが必要。
- モバイルアプリは、モバイルサイトがある程度上手く行った後に、一部の買い手に対して、提供するという順番で考える。モバイルアプリはモバイルサイトでプロモーションすることは必須。
- モバイルキャンペーンを社内の部門を超えて企画する
- スマートフォンやタブレット上での戦略において、うまく行っているところと行っていないところを、代理店とちゃんとミーティングすること
- 買い手と同じ立場であなたの会社について検索する、そして5分間で何がうまく行っているかいっていないかを考えることを、今日行う。
- モバイルキャンペーンはデスクトップPC用のキャンペーンと分けて効果測定すること
- あなたの会社のメッセージを伝えるために、HTML5などを使ってリッチメディア広告を出す
- マーケティングに関わる人間全員が、モバイルという観点から自身の行なっていることを常に見返す
- タブレットでの使い勝手を検証する。今日、5分使ってあなたの買い手がやっているのと同じように、タブレットで検索してみる。何が上手く行っているのか?行っていないのか?リッチメディアを使ってタブレットの能力を出しきる
これをベースにして、今すぐにでも戦略を考え始めてはいかがでしょうか。
この記事がその参考になれば幸いです。