前回の記事で、Googleが伝えたいことなどの抜粋をご紹介しました。
今回からはMobilePlayBookの具体的な内容をスクリーンショットともにご紹介してきます。
まずは「WIN MOMENTS THAT MATTER」というセクション。
「モバイルになぜ取り組まなければいけないのか、まず何をおさえておかなくてはいけないのか」という部分です。
具体的には
- バリュー・プロポジションをモバイルがどのように変えていくのか?
- モバイルが、オンライン上で我々が目指しているものにどんな衝撃をもたらすのか?
という内容。すべての基礎になる最も大切な部分です。
目次
1.モバイルユーザをどう出迎える?
- 買い手は、今や24時間常にスマートフォンやタブレットを使って、家からも職場からのバスの中からもネットを見ている
- そんな中「Uber」は、iPhoneとAndroidアプリの位置情報を使った、全国どこからでもタクシーが呼べるサービスを提供し、GrubHubは配達で同じ事を、HotelTonightはホテルで同じ事をやった。
- どの企業も、自社が相対しているお客さんが「いったいモバイルサイトに対して何を求めているか」を考えに考え、それを現実のものにした。
「from Anywhere」という言葉が象徴するような、GPSの情報を使ったものは分かりやすいですね。
どこでもタクシーが呼べる、どこでも近くのデリバリー店から食べ物を頼める、今晩泊まれるホテルを探して予約できるといった、今まで電話ではある程度行えたけれど、ネットでは不可能だったことをそのまま実現しています。
これは日本でもすでに始まっていて、話題になっています。例えば
- 今、いる場所にタクシー呼べるスマホアプリ、売上3億円突破 – ITmedia プロフェッショナル モバイル
- 「本当に来ちゃった」――売上5億のピザ注文アプリ、ヒットの裏に「ワオ体験」 – ITmedia プロフェッショナル モバイル
などですね。
この間テレビでも特集されたのでご存じの方もいるかもしれません。(ちなみに、私の家族も「すごい便利そう」と言っていました)
大切なのは「モバイルを使っている人に何を提供すべきか」考えること
ただ、このとき大切なのは、GPSを使ってなにかやろう!ということではありませんよね。
大切なのは
「モバイルというものから自社ないし自社がいる業界にアクセスしてくる人は、いったいどんなものを求めているんだろう?」
と考えることです。
そしてその上で、それに応えるためにいったい我社は何をやるべきなんだろうか、と考えること。
これがGoogleの言う「モバイルに対するバリュー・プロポジションの見直し」です。
これを突き詰めて、それをもとにモバイル戦略を立てることを、GoogleはMobile PlayBookの中で薦めています。
2.モバイルからのアクセスは地域を意識したものが多い
- Googleが持っているデータによると、全体の1/3のユーザが地域を意識した検索をしている
- スマートフォンユーザの95%がローカル情報を検索したことがある
- ローカル情報を検索した後に61%の人がそのまま電話をかけている
- 誰か知り合いが行ったところだから、行ってみた、という人が59%いる
- 上記3つのユーザのうち90%が24時間以内に行動している
これは日本の統計ではないので、そこは割り引いて考えるべきかと思います。
ただ、私自身の経験から言ってもわざわざその場でモバイルから検索するということは、差し迫っている用事の場合が多く、そしてその用事は大概が周りの情報、ローカルエリア検索です。
家から近ければ家からちゃんと調べて電話をしますが、それ以外では携帯からそのままかけます(なのでクリックで電話をかけられるようになっていないと、ちょっと嫌です)
Googleがここで言いたいのは、1/3もいる、ローカル情報を探している人に、企業はその期待に応えるコンテンツなり機能なりを提供すべきだということです。
最もシンプルなのはGPSを用いた最寄り店舗検索です。
事例として上がっている「SPECIALTY’S CAFE & BAKERY」では、さらにそこからランチの予約ができます。お店が混むらしいんですが、待ち時間をなくせるということで喜ばれているそうです。
ただのローカル情報提供だけではなく、もう一歩進んだ機能を
こういった更に進んだ取り組みは、
「近くの店舗を探したい人は、もちろん待ち時間だって短くしたいはずだ、だって急いでいるんだろうから大なり小なり」
といった、お客さんのニーズを取り込んだ結果生まれたものではないかと推測されます。
1つ前のページで書かれていたバリュー・プロポジションのことにつながりますが、ローカルでもそこをきちんと考えると、ただの店舗検索以上の体験をユーザにプレゼントすることができるのです。
3.価格は簡単に比較されてしまう
これは、小売業の肩を中心にかなり悩ましい問題になっていることです。
まずはデータだけピックアップします。
- 「45%」の消費者はスマートフォンを店内で使って、商品について調べている
- 「53%」の男性、「38%」の女性はスマートフォンを店内で使って、価格比較をしている
- 「39%」の人はスマートフォンから得た情報のために、何も買わずに店を出ている
- 「12%」の人は他のオンラインショップを見ている
- 「8%」の人はその商品がいいものか、便利なものかどうか、他のストアでチェックしている
この情報が示しているのは2つのことです。それは
- 価格は簡単に比較されてしまう、最安値はすぐわかってしまう
- その商品の情報のセカンドオピニオンを、他のサイトで探す人が多い
ということです。
これは非常に悩ましい問題です。なぜなら、特に価格については大手に勝てない場合のほうが圧倒的に多いからです
なので、小売店がこれをそのまま指を加えて見ていれば、オンラインショップのショーケースになってしまう可能性があり、それはすなわち商売にならないということです。
Googleが薦める3つの戦略
これに対してGoogleは3つの戦略を提案しています。
具体的には
- 店内で「ここで買いたいと思わせる工夫を行い、その場での購買を促進する」
- その店でしか変えない商品構成などにする
- 店舗自体がモバイルでの情報提供を取り入れ、買い手が欲しい情報などを先回りして提供する
3番については「Sears」という大手小売店が引き合いに出されています。
Searsは450の店舗にiPadと無料のWi-Fiスポットを入れて、店舗内で自由に自分のものあるいは店舗の端末を使って、自社以外のサイトも含めて見られるようにしました。
これはメリットもありデメリットもあると思いますが、現在引き続いているということは、メリットのほうが大きいと推測されます。
デメリットはもちろん、より簡単に他社情報に触れられるようになってしまうことで、これをクリアできているのは正直Searsという業界の5本指に入る大手だからではないかという印象もあります。
メリットとしては、店内にiPadを設置してそこで店頭ではなかなかできないような商品説明を行ったり、それを通じて、使い方のノウハウや比較情報を出していくと、その店に対する印象を変えること。
カスタマーサービスで差をつけるしか無いのではないか?
これは、言い換えれば、この店は詳しいから、多少高くてもここで買ってもいいかなと思わせることが、大切なのです。
それが、1番と2番の項目にもつながっているのではないかと思います。
結局、
- 価格面でも在庫面、言い換えればスピード面でも、大手に勝つというのは難しく
- さらに商品自体は大手もそれ以外も同じなので、品質で差をつけるのも難しい
- とすると、残ってくるのはいかに「カスタマーサービス」で差をつけるかという、町の電気屋モデルになってくる
のです。
大手には、何か圧倒的なものがないと太刀打ちできません。
専門店化して、顧客単価を上げてビジネスを回していく必要があるのでは、と私自身は思っています。
SearsのWiFi導入などについてはこの記事が詳しいです。
4.モバイルからの閲覧に最適化されたサイトの重要性
Googleとしては「モバイルに最適化されたサイトは必須」という考えです。
データとしては
- 57%のユーザはモバイルに特化されていないサイトデザインのページを人に薦めない
- 40%はサイトデザインがモバイルに特化されていないという理由で他のサイトで買った
これはデザインという「いわゆる見た目」の部分だけではなく、「モバイルユーザーの使い方などを元にしたサイト構成にしていないことが最も問題」ということです。
言い換えれば「モバイルユーザのユーザビリティに配慮していない」ことが最大の問題であり、一歩引くと「モバイルユーザの気持ちに立って商売をしていない」ことへの問題視です。
モバイルフレンドリーなサイトについては、この動画の中程に出てくる、サイト例が一つの参考になります。タップ式で席を選択できるコンサートホールなど、こういった、スマートフォンなどを前提としたデザインにすることで、大きくコンバージョンが改善したそうです。
そして、このモバイルサイトを何度も何度もPDCAサイクルを回して改善を続けること。
モバイルファースト
また、考え方としてここで「モバイルファースト」という考え方が出てきます。
モバイルファーストとは、モバイルをPCなどよりプライオリティの低いものと考えるのではなく、まずモバイルを最優先してサイトのデザインや構築を行おうという考え方です。
サイトへの来訪者について、どんどんとモバイル端末からのアクセスが増えているのなら、早めにモバイル優先のサイトへのリニューアルを考え始めたほうがいいかもしれません。
5.モバイルアプリはモバイルサイトで成功した後!
続いてモバイルアプリの話題です。
大切なのは
「モバイルサイトがある程度軌道に乗ってから、モバイルアプリをそれをサポートする存在として作る」
という考え方です。
先にモバイルアプリだけをリリースしても、まず使ってもらえません。
誰が、どこの誰ともしれないサイトのアプリをインストールするでしょうか。信頼性の面もそうですが、何より何が有益なのかわかりません、
私の経験則ですが、アプリのインストールは、ほとんど直感的に行われます。いちいちAppStoreで説明を読んで、いいと思ったからインストールするようなものではありません。
モバイルはアプリだ!ということで、まずアプリに手を出す方がいれば、全くおすすめできません。
と、少し本題からずれましたがGoogleの意見をまとめます。
- アプリを出すことがモバイル戦略、では無い
- アプリは本質的にはブックマークであり、ユーザがあなたのサイトともっと距離を縮めたいと思ったらインストールしてくれるもの
- トラフィックは基本的にWEBから来る。
- ただWEB上にあるものをアプリにしても無価値。さらに付加価値を加えないとアプリを使う理由がない
- アプリを開発するなら、まずは最もお客さんがいそうなプラットフォームを選べ
- サイト上でアプリのプロモーションを行うこと、メールレターなどでもプロモーションすること
- モバイルアプリへのリンクは無料だということがわかるようにすること
- モバイル広告でアプリへのダウンロードページに飛ばすのも有り
アプリについては、機能的にWEBと同じなのなら誰もダウンロードしません。アプリでしかできないようなことを付加価値としてつけ、それをプロモーションしていくことが大切ですね。
どんな付加価値をつけるかは、様々にあるでしょう。
コカ・コーラのようにゲームをつけるというエンターテインメント的な手法もあれば、ドミノ・ピザのように、どこからでも様々な組み合わせで注文できるという利便性であったり、ウォルマートのように、買い物リストを作れるというツール提供など、ユーザが「これはいい」と思えるようなものがあればいいのです。
終わりに
ここまでで、最初の「モバイルになぜ取り組まなければいけないのか、まず何をするべきなのか」というセクションについて、ざっと眺めてきました。
実際の動きも体感していただきたいので、ぜひ元のGoogleMobilePlayBookを、スマートフォンかタブレットで見ることをおすすめします。
次回は「モバイル戦略を進めていくには、どの様に組織を動かしていけばいいのか?」と「モバイルに適応したマーケティングを行うにはどうしたらいいか?」の章です。