
メールマーケティングにおいて、昔から効果があると言われていることの1つに「件名に名前や会社名などを挿入すると、効果が高くなる」というものがあります。いわゆる「パーソナリゼーション」です。
元ネタはどこなのかと検索をしてみたのですが見つかりませんでした。
ただ、件名に名前が入っていると「見つけてもらいやすくなり」「親近感を与えることができる」という理由が多いようです。
しかし、それは本当なのでしょうか。結論から言うと疑ってかかるべきのようです。
目次
60万人に対して送られた1000万のメールで調査した結果
60万人に対して送られた「マーケティング目的」の1,000万通のメールを用いて、パーソナリゼーションの効果について調査した結果があります。
残念ながら調査そのもののデータは見られないのですが、発表元のFox School of Businessにて、そのサマリーが記事として書かれていました。
こちらです。
調査データそのものがないので、その点は考慮すべきでは有りますが、以下の様な内容が書かれています。
調査結果のサマリー:端的に言えば「気持ち悪い」と思う人が95%
- 95%の消費者が、名前によってパーソナリゼーションされたメールに対して否定的な反応を示した
- 名前でパーソナリゼーションされることに慣れていない人は、名前が差し込まれていることだけで、配信解除してしまうこともあった
- 過去に購買行動を行うなど、何らかの関わりがあったユーザは、名前に寄るパーソナリゼーションに対して特にネガティブな反応は返さなかった
端的に言えば、受け手のほぼ全員が、名前が差し込まれたメールを「気持ち悪い」と感じている、という内容です。
ただ、過去に購買などを行っており、ある程度その売り手と関わりのある買い手は、名前の差し込みに対して特にマイナスの感情は頂かなかったようです。
特に「サンクスメール」がすでにパーソナリゼーションされていると、悪印象
何かに登録して、その返信としての「サンクスメール(グリーティングメール)」に名前が差し込まれていると、かなり悪印象とのことです。
例えば、2ページ目以降を読むには会員登録をして下さい系のサイト(個人的にあれ系は絶対登録しないのですが)に登録したとして。
その登録後に来るサンクスメールが
【登録完了】中山陽平様、◯◯◯への登録が完了しました。
といった件名だと、悪印象だということです。
大事なのは「距離感」
ここで押さえておくべきは何かというと「件名に名前を入れることはNG」ということ、ではありません。
そうではなく、オンラインでもオフラインと同様に「距離感」「親しみ度合い」を考慮してマーケティングするべきだ、ということです。
──
オフラインにおいて。
初対面の人に、いきなりフランクに名前で呼ばれたり、個人的なことを根掘り葉掘り聞かれたら、すくなくとも日本では嫌がられるはずです。
そういったことは、もっと親しくなってから出ないと「空気の読めない人」「馴れ馴れしい人」などと思われてしまいます、よね。
そういった印象はプラスの印象ではない、ですよね。これが、オンライン、インターネット上でも同じだよということです。
距離感の重要性について
距離感についてはSNSにおいて最も注意すべき点です。これについては何本か関連記事を書いているのでこちらも御覧ください。
1.1.接近戦になると人は感情の起伏が大きくなる
心理として、人は近くなれば近くなるほど、相手に持つ感情の起伏が大きくなります。言いかえると好きになってもらいやすい、かつちょっとしたことがきっかけで、嫌いになられやすいという状態です。
また、やっかいなことに「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」がソーシャルでは発生しやすいんです。そう感じられたことはないでしょうか。
実際にリアルで会っていれば「でも、いい人だよね」と思えることが、ソーシャルではそう思えない、そういうことがあります。
つまり、ソーシャルメディアという場所は「ひどくセンシティブな場」だ、ということです。
これがメールにおいても同じなんですね。受け取る人があなたに感じている「距離感」から考えてパーソナリゼーションの仕方は調整する必要があります。
具体的にはどのようにするのがいいのか?
この辺りは経験則の部分が大きいですが、
- 件名に名前を入れるのは、基本的にやめた方がいい
開封率がそれで上がった経験が、私としてはほとんどない。対面で会うサービスのリピータ対象のステップメールは多少プラスだった - 本文中に名前を入れるのは、名前を得られたアクションに関するメールだけ
資料請求した人に、資料請求についてメールする場合は名前を入れていいかなと思います。NGなのは、資料請求した人に対してメールマガジンを送る場合は、名前を入れると「この会社、個人情報をどう回しているんだろう」と不安になる傾向があると感じています。 - 実際に会った、話した人は結構大丈夫
この場合は、むしろよそよそしくならないように気をつけるべきかもしれません。ただ、やはり肉声を聞く、会うという行動は一気に距離感を近づけます。 ただ、名刺もらった相手に送りつけるのはそもそも含めてNG。
などは押さえておくといいかなと思います。
また、プライバシーポリシーのページに明記しておくのも大事ですね。
心配ならA/Bテスト
意味があるかどうかはA/Bテストをするのが速いです。
使っているメール配信サービスにそういった機能があれば使うべきです。
もしなければ、リストの半分半分で手動で分けて送るのがいいですね。
それによって開封率やクリック率、そして配信解除率がどう変わるか、そのユーザがそこからコンバージョンしてくれるかどうか、そのあたりを見ながら、やるべきかやらないべきか考えてみるのが、一番速いです。
何よりも目の前の現実が「真」ですので。
終わりに
私自身、何度か名前を入れた件名で送ったことが有るのですが、正直な所「あまり変わらない」と言う印象です。
そもそも母集団がそれほど多くないので、明確に出なかっただけかもしれませんが、少なくとも明確に「開封率が上がった!」ということはありませんでした。それよりは「配信時間」「件名の品質」の方がはるかに大きいです。
今現在名前を差し込んでいる方は、一度その是非をテストすることをオススメします。また、今後行うことを検討している方は、導入後変化があったかをきちんとチェックすることをオススメします。特に解除率ですね。
繰り返しになりますが、何よりも目の前の現実が「真」。テストを行って、その結果を元に施策を回してみることをオススメします。
photo by Orin Zebest
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