ECサイトにとって、できるだけ減らしたいものの1つが「カート放棄率(カート落ち率)」。せっかくショッピングカートに商品を入れてくれたにも関わらず、何らかの理由で最終的な購買に至らないというケースです。
カート放棄率を改善するさまざまなノウハウは有りますが、1番押さえておきたい点があります。
それは買い手が「なんでカートを放棄したのか?」という「理由」。
理由が分かれば、改善は効率よく進みます。
細かい汎用的なテクニックや解析結果からの推測も大事ですが、まず理由を知ることができれば、大きく改善は前に進みます。
そして、それを元にして、いったいどんな対処をすべきか。
これは「消費者心理」「消費者行動」を押さえることが必要です。その観点で重要な事は、記事タイトルにもある「カート放棄は終わりではなく始まりだ」ということです。
ではいったいどういうことでしょうか。
目次
「カート放棄の理由」について19,000人のアンケートを取った
米国WorldPay社が、2012年ですが「なぜカートを放棄したのか?」についてアンケートを取っています。
公開されています。こちらです。(• Reasons for online shopping cart abandonment in 2012 | Statistic )
これは、役に立つなデータだなと思います。
ECサイトだけではなく、一般のサイトでも押さえておくべきポイントがありますので、コンバージョンレート改善でお悩みの方は、きっと発見があるかと思います。
カート落ちが発生する上位の原因
まず、原因の上位です。先ほどのグラフに載っているものを訳しました。
やはり価格面が多いですね。また、購入までの手続きやセキュリティ面が話題になってもいます。
- 想定していなかった費用が発生した
- ただ単にウィンドウショッピングしているだけだった
- もっと安い店を見つけたから
- 全体として見てみたら思ったより高額な買い物になってしまったから
- 購入に反対されてしまった
- サイトのナビゲーションが分かりづらかった
- サイトがクラッシュした(Oh…)
- 手続きが長いと感じた
- セキュリティの確認が過剰すぎて面倒だと感じた
- 決済のセキュリティに不安を感じた
- 配送方法で希望するものがなかった
- サイトがタイムアウトした(Oh…)
- 外貨で価格が表記されていた
- カード決済が降りなかった
この中で上位のものについて、きちんと対応していくことで、カート放棄率は大きく改善していきます。
そこで、それぞれについて、いったいどんな対処をすべきか、ということをここから書いていきます。
#1.想定していなかった費用が発生した
例えば、カートに商品を入れて、そしていざ決済に進めようとした時に
- 外箱の費用
- カード決済費用
- 梱包費用
- サービス料
など、よくわからない費用が突然プラスされたらどうでしょうか。
きっと不安になると思います。
その費用が軽微だったとしても「このショップは、なんだか知らないところで費用が発生するかもしれない」と思うと、その先の手続きでも何かあるのでは?と不安になってしまいます。
ペイメント周りで「不安」は最大の天敵です。そして一度発生した不安を拭い去るのは非常に大変です(同じ理由で、いったん信頼が形成されると、一気に購買の敷居は下がりますね)
先回りして提示すると、不安はそれほど発生しない
実際、費用が発生してしまうのは仕方ありません(うまく転嫁できればいいのですが)だとすれば、大事なのは「想定していなかった」と感じさせないことです。
つまり「先回りして提示しておく、しかもポジティブに」ということです。
一番多いのは「送料」「代引き手数料」でしょうか。送料については「◯◯◯円以上購入したら無料になる」のでは?と思う消費者が多いという点も抑えておくべきポイントです。
その前提で、少なくとも送料と代引き手数料については、サイドバーないしヘッダーの目立つ所に、先回りして書いてしまう、その方がトータルでは良くなります。
例えば
- 「1万円以上で送料無料!」(※送料無料にならないのなら「送料は一律525円」ですとか。)
- 「代引き手数料は一律315円」
などを、目立つ所に書いてしまうことをオススメします。別途費用がかかるということを表示するのに抵抗のある人もいるかもしれません。できるだけ費用は少なめに見せておきたいからです。
しかし、カート落ち率ということを考えると、トータルでは先に表示した方がいいです。
このケースとにかく「予想していなかったコスト」なのが問題なんです。最初から想定内なら、問題ないんですね。
この点を押さえて、出せる情報は先に出す、眼につきやすい所に(FAQには載ってます、では駄目です)が大事です。
送料はできるだけ無料にしたほうがいい
いろいろ難しいところはあると思いますが、可能な範囲で「どうにかして送料無料に出来ないか」と考えることをオススメします。
理由は
- 送料無料週間は、効果的なキャンペーンである(ComScoreの調査では、年末商戦で16%の売上アップにつながった)
- クチコミに繋がりやすい(あそこの店は送料無料だからいいよ)
- 平均購買単価より少し高めの価格を、送料無料下限価格に設定することで、顧客購買単価を底上げすることができる
など、さまざまです。送料をマイナスファクターとして捉えるのではなく「無料にすることで、トータルでプラスに出来ないか」と考えてみてみることをオススメします。
#2 ただ単にウィンドウショッピングしているだけだった
これは、ネット通販をよく使う人にとっては「あるある」ネタかもしれません。
とりあえず気になるものをカートに入れるだけ入れておいて「でもまぁ、今日は別にいいか」という気持ちになり、その日は買わないというパターンです。(あるいはそもそも買う気がない)
これについては、海外ブログSeeWhyにて興味深いデータが出されています。それは
「オンラインショッピングをする人の99%は”初回のアクセスでは購入しない”」というものです。
これは結構衝撃的な結果です。
ただその横の円グラフ。これを見ると
- 初回で買わなかった人の25%は、もうそのサイトに返ってこない(完全なるカート放棄)
- 残りの75%は、興味を持ったまま、そのうち再度来訪する(初回だから買わなかっただけ)
とあります。つまり、全然買う気がないのではなく「一回目は様子見、少し自分の中で寝かせて、もう一回後で来よう」と考えている人が4人中3人だということです。
再来訪した時にスムーズに買える仕組みが必要
つまり、後々の来訪時に、買い物を引き続き行えるようにしておくことが大事、だということです。
最悪なのは、しばらく経ったらもうカートの中身がリセットされてしまい、またイチからやらなければいけないケースです。
面倒ですよね。
最低限、ブラウザ側でデータを持っておいて、次の来訪時、最低2週間程度はカートの中身をキープしておける仕組みを作るべきです。この辺りAmazonはうまくやっています。ウィッシュリスト(ほしい物リスト)の機能です。
Amazonの場合は、在庫僅少であったり、ほしい物リストの中の物が値下がりしたりするとメールで通知してくれたりもします。うまくやっているなと思います。
リターゲティング広告も、この辺りを加味してカスタマイズして出せると効果が高いのではと思います。
#3,4.価格関連(もっと安い店を探しに行く)
価格に関しては、どうしようもない印象もあります。ただ、買い手は必ずしも「値段だけ見て」買っているわけではないので、そこでできることはあります。
「ConversionXL」では以下のようなことが書かれています。
まず前提として、あまり狙わない方がいい、無理に取ろうと思わない方がいいターゲットについて書かれています
それは
- カートの放棄率は、カートに入っている商品の合計金額によって変わる。
- 最も放棄されやすいのは、100ドル以下。101〜250ドルの場合と比べると1.5倍近く放棄される
- つまりこの価格帯の層は「価格に最も重きをおいていることが多く、価格勝負するしか無い層」
- この層を追いかけるのは、やめたほうが良いケースが多い
ということです。
その上で
- リターゲティング広告で「今なら送料無料」「返品手数料・送料無料」などを出して、直接的な価格以外の面で訴求する
- カートに商品が入ったままの層に対して特別オファーを出す(5%オフなど)
- 特に高額商品においては「商品についてプロが電話で無料相談を受けます」という不安の解消策を提案する
といった、リターゲティング広告によるプッシュを薦めています。きっかけを与えてあげるということですね。
メールで教えてあげる、後押しをする
また、これは相手のメルアドが分かっているケースに限りますが、メールによって「カートに入ったままですよ」と教えてあげるというのも勧められています。
具体的には
- カートを放棄してから24時間経ったらメールを送る
- 内容はシンプルに「カートに入っているアイテム」「その商品のレビュー」「オススメの声」など
- カートに入っている商品一覧ページへ戻ってくることを促す
- titleは「何かお忘れではありませんか?」など
などです。
…
また、ConversionXLの記事にはこんな印象的な言葉も書いてあります。
Cart Abandonment Isn’t The End,
It’s Just The Beginning
カートの放棄は「終わりではない、まさに始まりなのだ」
…
なるほど…と思わせる言葉でした。何となく「カート放棄」というのはイコール失敗というイメージが有りますが、お客さんに購買行動を考えると、一回の来訪でいきなり買うという方が、レアケースなのかもしれません。
買い手というものを1セッション単位で捉えるのではなく、もっと長いスパンで捉えるのが、必要なのです。
それ以外の項目についても同じように考えると、また別の答えが出てくるのではと思います。
この記事が、カート放棄率の改善やトータルでの売上アップにつながれば幸いです。
Photo by Andrea Marutti
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